心温まる一人暮らし

私がはじめて一人暮らししたのは、高校を卒業して2年ほど経ったときでした。 今思えば、ダメ男だったと思うのですが、卒業してすぐに就職したところを半年で辞めてしまい、 それからも何度か転職を繰り返していました。 そんな中でも、ギリギリ一人暮らしできるだけのお金を貯め、引越し先を探しました。

転職ばかりしているので、金銭的にそんなに余裕が無く、 まるで昔のドラマに出てきそうなボロボロの文化住宅で一人暮らしを始めるのが精一杯だったのです。 しかし、そういったボロボロの場所に身を置く方が、 ハングリー精神もわいて逆に頑張れると自分に言い聞かせ、部屋を決めました。 家賃は12,000円。部屋は6畳一間でトイレは共同でした。風呂なんて当然ついていません。 日当たりも悪く、部屋としては本当に最低でした。

ここの文化住宅のほかの住人が本当にいい人ばかりで私の生活は最低でしたが、 人間関係には恵まれました。 本当に昭和初期の時代がその文化住宅では当時でも続いている雰囲気だったのです。 調味料が足りなければ貸してもらったり、頂き物があればおすそ分けしたり、 料理を多く作ったからと持ってきてくれたりと、 今ではあまり見られなくなった光景が普通にありました。

私は男なので、人様に差し上げれるような料理は作れませんでしたが、 隣の中年のおばさんが息子と同年代だからと言って、 よく気にかけてくれて夕飯を持ってきてくれました。 そのお礼で、私は当時アクセサリーを扱う会社にいたので、 サンプルで作ったネックレスなどをおばさんに時々プレゼントしたりしていたのです。 持ちつ持たれつ、貧しいですが心温まる一人暮らしでした。